2020.06.03
新たな特産品として広がる 川崎生まれのトウガラシ新品種「香辛子」
川崎産トウガラシを使ったオリーブオイル誕生
オリーブオイルの製造販売を手がける「わざあり」(相模原市南区)が今年3月に発売した新商品「香力」(かりき)は、川崎市で生産されるトウガラシ「香辛子」を使ったフレーバーオリーブオイル。同市が進める知的財産マッチング「川崎モデル」で唐辛子と相模原市の企業が結びつき、商品化につながった。市外の企業による製品開発は初めてとなる。
同社は地元のニンニクの成分を入れたオリーブオイルを製造しており、新商品ではその際のニンニクから栄養成分を抽出する技術を応用した。1本あたり(180グラム)「香辛子」20~30個ほどから抽出したエキスを、スペイン産オリーブオイルに配合。辛さはほとんど感じずに、さわやかな唐辛子の香りが口の中で膨らみ、パスタやサラダにかけるなど、そのまま使用できるのが特徴となっている。同商品は一般消費者だけでなく、川崎市内のホテルや飲食店でも利用が広がっている。
辛くないトウガラシ「香辛子」とは?
「香辛子」は、味の素の研究所(川崎市)で2018年10月に開発された新品種。「辛みが少なく、フルーティな香りで、生でも食べられる」のが特徴。開発の際の育種の元として採用されたのが激辛で知られるハバネロとブートジョロキアである。本来は甘い香りやうまみが同品種の特徴だが、強い辛みのせいでその良さが活かされていないということが開発のきっかけとなった。
トウガラシの辛み成分「カプサイシン」は、エネルギーの代謝に関わるホルモンの分泌を促進して、脂肪の燃焼を助ける働きを持つ。開発された新品種は、このカプサイシンが「カプシエイト」という別の物質に置換されたもの。カプシエイトはカプサイシンと同様、基礎代謝を向上させる働きを持ちながら、辛さはカプサイシンの1/1000に抑えられる。
同品種は味の素、JAセレサ川崎農業組合、川崎市の3者が連携し、品質の維持や栽培土壌の適合などの研究が行われ、市内29軒の農家で栽培、2019年8月に初めて収穫された(2019年8月時点)。その後、「川崎モデル」のネットワークを活用し、食品加工業者のマッチングが行われ、新商品、メニュー開発が開発が進められてきた。
「辛み=刺激」がトウガラシの魅力であることは間違いないが、一方でその辛さが苦手だという人も多い。これまで辛みの陰に隠れていたトウガラシ本来の「うまみや香り」にフォーカスを当てたことで、新たな料理方法や商品の開発が可能となり、「辛くないトウガラシ」として新たなファンの獲得につながった。
先に挙げたオリーブオイルの他にも、川崎市では市内の15軒の飲食店、食品加工店で活用されており、地域の特産品として定着しつつある。同市担当者は「今後は生産量の増加を目指して、生産地を県外にも広げていければ」と話す。今後のさらなる広がりに注目したい。
<参考記事>
(タウンニュース、2019年8月30日号)
・川崎産唐辛子「香辛子(こうがらし)」がオイルに相模原の企業が開発
(タウンニュース、2020年4月3日号)