2020.05.22
被災を乗り越えて特産品復活へ 茨城・城里の「幻のお茶」と福島・大熊のキウイ
歴史ロマン香る「幻の茶」
茨城県城里町で栽培されているのは、「水戸黄門」こと徳川光圀が愛飲し、名付けたとされるお茶「初音」で、2014年から復活に向けて栽培が進められてきました。同町の古内地区は、県内三大銘茶の一つ「古内茶」で知られる茶の栽培が盛んなエリアですが、原発事故による風評被害の影響を受け茶の売り上げが低迷してしまいました。そこで、江戸時代に同エリアで栽培されていた「幻の茶」を復活させ、盛り上げようとプロジェクトが始まりました。黄門様の幻のお茶……なんとも魅力的な香りがしますね。
初音茶は、同町下古内の清音寺で古くから栽培され、現在も母木が残っているそうです。その母木から採取した挿し穂を栽培し、育った苗木350本を2017年4月に植え付けたとのこと。そのお茶が、ついにこの5月下旬に収穫となりました。
収穫を迎えた初音茶は、2014年7月に同寺の母木から採取した挿し穂千本を、 町内の茶農家や大子町の県農業総合センター山間地帯特産指導所に移して 栽培したもの。17年4月にその苗木約350本を町登録有形文化財「島家住宅」 (同町上古内)の敷地に植え付けた。 茨城新聞、2020年5月26日付
プロジェクト発足から6年。記事によると、6月には試飲会が行われるとのことです。販売はまだ未定ですが、歴史のロマン香るお茶を味わえる日も近そうです。
<参考記事>
- 黄門様愛した茶・初音、復活間近 茨城・城里、5月収穫へ(4月29日)
(茨城新聞、2017年4月21日)
特産品が町の誇り取り戻す
福島県大熊町は、「フルーツの香り漂うロマンの里」とキャッチフレーズを掲げるほど、多くの果樹園が広がるフルーツの町として知られていました。原発事故により全町民が避難生活を余儀なくされてきましたが、2019年4月に一部地区で避難指示が解除されると、今年3月には帰還困難区域でも避難指示が解除、JR常磐線が全線再開。徐々に人の流れも生まれ、復興に向けて進み始めています。
そして昨年12月、町の有志が集まり「おおくまキウイ再生クラブ」が設立され、かつての特産品・キウイを復活させようと4月中旬に栽培が始まりました。大熊町のホームページには、このプロジェクトを通じて「特産品の復活による古里の誇り回復やイベントでの町民同士の交流、関係人口の拡大などを目指します」とコメントがあります。収穫は2年後以降とのこと。町の誇りでもある果物が離れ離れになっている町民を結び付け、大熊町が再びフルーツの町として復活することを願わずにいられません。
<参考記事>
(日経新聞夕刊、2020年5月15日)
(2020年4月19日)