「郷土料理伝承学校 -全六回-」受講者募集のお知らせ
郷土料理の普及、伝承を目的とし、「郷土料理伝承学校 -全六回- 」を2012 年11月から開講致します。
本講座は日本各地の農山漁村で各地域の風土や歴史、先人の知恵とともに受け継がれてきた郷土料理をテーマに、農業、漁業、日本の食文化に関心の高い層(料理人、料理店経営者、料理研究家、食に関わる職業の方々、一般の方々)を対象に実施。フードジャーナリストや生産者をはじめとする、食の最前線で活躍している6名を講師に迎え、日本に伝わる郷土料理を多面的に学びます。今後は受講者同士の交流促進や生産者を交えたフィールドワーク、更なる講師陣の育成を通して継続的な実施を目指します。
▼ 「郷土料理伝承学校 -全六回- 」講座概要
▽日時
第一回11/6(火)、第二回11/14(水)、第三回11/19(月)
第四回11/22(木)、第五回11/29(木)、第六回12/4(火)
※各回すべて午後3時~午後4時30分
▽場所
東京都中央区新川2-6-16 馬事畜産会館 2階会議室
※最寄り駅:茅場町駅(東京メトロ東西線)もしくは八丁堀駅(東京メトロ日比谷線、JR京葉線)下車、徒歩5分
▽主催
一般財団法人農村開発企画委員会
▽企画、運営
一般財団法人農村開発企画委員会、ロケーションリサーチ株式会社
▽校長
向笠千恵子 (フードジャーナリスト、食文化研究家)
▽定員
25名(先着順にて受付、定員になりしだい締切りとさせていただきます)
▽費用
31,500円(全六回:税込)※テキスト代含む / 学生優待価格27,300円(全六回:税込)
初回講座の際、現金にてお支払い願います。領収書をご用意しております。
▽申込方法
E-mailまたはFAXにて下記事項をお伝えのうえ、お申込み下さい。
(お名前、ご所属、ご住所、電話番号、FAX番号、E-Mailアドレス)
お申込みから3営業日以内に、担当から受講確認のご連絡をします。
上記ご連絡がない場合はお手数ですが以下までご連絡願います。
▽お問い合わせ先
TEL:03-3297-5641 FAX. 03-3297-5543
E-Mail:k_hayashi@rdpc.jp
一般財団法人 農村開発企画委員会 林(はやし)
本ページと同内容のものをPDFファイルにまとめてございます。
こちらから御覧ください。(274KB)
▼講座詳細(予定)
▽第一回「郷土料理こんにちは」―郷土料理とは
講師:向笠 千恵子(むかさ ちえこ)
(郷土料理伝承学校校長、フードジャーナリスト、食文化研究家)
現代の郷土料理とは、地域に根ざした料理というだけでなく、心のなかのふるさとの風景のひとつとして、誰もが大好きな食べものを指す言葉です。それだけに、歴史的な成り立ちや特産食材の知識をもつと、おいしさがいっそうふくらんできます。向笠千恵子が全国を歩いて掘り出した味のなかから、とっておきの物語を紹介し、郷土料理のエッセンスを伝授します。
▽第二回「郷土料理を伝えるⅠ」―伝統食材の生産:下仁田ねぎ
講師:小金沢 章文(こがねざわ あきふみ)
(群馬県下仁田町 下仁田ファーム 小金沢農園代表)
郷土料理の要となるのは、その土地で生まれた食材。風土に根付いた食材だからこそ、料理をさらにおいしくできるのです。もちろん、郷土の食材ですから、できる限り低農薬・無農薬で栽培するのが原則です。本講義では、群馬を代表する野菜・下仁田ねぎの栽培法、味の特徴、おいしい食べ方の紹介を通じて、“郷土と 産物のおいしい関係”の秘密を説き明かします。また、下仁田のもう一つの特産品・こんにゃくについてもお話しし、ねぎとこんにゃくを用いる郷土の家庭料理 を紹介します。さらに、通販やネット交流を通じての“まち”と“むら”の食のつながりにもふれます。
講師プロフィール
農家の長男として生まれるも農業が嫌で下仁田を飛びだし上京。大学卒業後、ファッション業界に身を置き、1997年には(株)グラマラマを設立。約10年経営するも、ふとしたことからUターン就農を決意。2006春に家業を継いで営農を開始した。ブランドビジネスの経験を活かし、ブランド野菜である「下仁田ねぎ」等の生産販売を展開している。
▽第三回「郷土料理を伝えるⅡ」―伝統食材の生産:米沢牛
講師:尾﨑 仁(おざき ひとし)
(山形県米沢市 米沢牛老舗「登起波牛肉店」代表取締役)
肉食は明治から始まった新顔の食文化。なかでも米沢牛を始めとするブランド牛肉は、すき焼きという新しい日本料理によって、今や国民食といえるほどの隆盛ぶりです。たとえば、米沢市の登起波では、たんに高級化を目指すのではなく、肉の部位を盛り合わせたり、割り下に味噌を加えるなど、郷土の嗜好や味の変化を 考慮して、新郷土料理といえる味を創り出しています。一方で、山形県の牛肉文化は、芋煮という日本で一番有名な郷土料理を生み出しました。大勢が川原に集まる芋煮会での交流なども含めて、山形県の郷土料理の魅力を解説していきます。
講師プロフィール
創業明治27年の老舗牛肉店の五代目。ハム・ソーセージ製造を大学時代に東京小金井のケーニッヒにて修業。東京農業大学畜産学科を卒業した年の11月に四代目が亡くなり五代目店主となる。米沢牛のれん会会長、米沢牛購買者会理事、米沢食肉組合副組合長、山形県家畜商業協同組合理事など要職に就く。2012年8月、「まぼろしのブランド牛 米沢牛物語」(エル書房)を出版した。
▽第四回 「郷土料理を支える」―酒と調味料
講師:掛田 勝朗(かけだ かつあき)
(神奈川県横須賀市 地酒・伝統食品「掛田商店」会長)
地域の気候風土は、その土地ならではの味覚センスをはぐくみます。とりわけ、味付けの基本となる味噌・醤油は、各町村ごとに醸造元があるくらいで、郷土料理の味をつくり出すのに欠かせない調味料です。そのおいしさはどこに由来するのか……。かたや、郷土料理には地元の酒が合うのも事実です。全国の蔵元 を訪ね歩いた掛田勝朗が、日本酒・焼酎・泡盛・ワインなどの種類別に、料理と酒がおたがいに引き立て合う関係を解説します。
講師プロフィール
40年近く酒を中心として全国の伝統食品の生産者を訪ね、その姿勢を伝え、現代に生きるわれわれ生産者、生活者(販売者を含め)がそれぞれの立場において、日本の食文化を考え、守り、次世代に伝える理念運動を続けている。実践として、清酒、焼酎文化の会、業界の交流、研修会、特に沖縄への想いは強く、泡盛文化の会には力を入れている。
第五回 「郷土料理を伝えるⅢ」―地域における伝承の実践
講師:高家 章子(こうけ しょうこ)
(岩手県葛巻町 農家レストラン「みち草の驛」代表)
本来、郷土料理は家庭の味でした。しかも、各家ごとに何代にもわたって伝えられてきた作り方や味付けがあります。それをお客に披露するのが、今大人気の農家レストランや農村レストラン。農家の女性たちが自らつくる料理が話題です。本講義では、村に水車を復活して水車製粉したそば粉、小麦粉を中心に地域の伝承料理を採算ベースにのせた『みち草の驛』の体験と実績を紹介します。
講師プロフィール
元葛巻町役場職員(管理栄養士)。平成4年に山間高冷地の条件を活かした蕎麦栽培、守り続けてきた水車小屋、伝承の手打ちの技、の3つの資源を活かした蕎麦店「森のそば屋」を開店。続いて産直と農村レストラン「みち草の驛」を開業し、戸数55戸の山あいの集落に年間6万人が訪れるようになる。この地域活性化への貢献等により、第19回食アメニティコンテスト農林水産省農村振興局長賞を受賞した。
▽第六回 「郷土料理を引き立てる」―各地の焼きもの、木工品と器
講師:川原 渉(かわはら わたる)
(東京都日本橋大伝馬町 汁・飯・おかず・季のもの「かわはら」店主)
もともと家庭料理である郷土料理をレストランでおいしく食べさせるためには、店舗側の気配りと演出が必要です。食器、盛り付け、卓上のしつらえなどを、お洒 落すぎず、家庭的すぎないようにコーディネートするには、何よりもバランス感覚が大切。郷土料理を提供するときに欠かせない器使いのテクニックと揃えておきたい器について、わかりやすく説明します。なお、川原渉調理長は、富山生まれ、静岡育ち、金沢や東京で仕事をしてきた経験豊富なオーナー調理長です。
講師プロフィール
富山県生まれ。幼少の頃から料理に興味をもち、母親が購読する雑誌を見て調理することもあった。「東京グランドホテル」「八芳園」から1987年「ゆず亭」料理長、「霞町三〇一ノ一」料理長を経て、2011年5月、日本橋大伝馬町に「かわはら」をオープン。茶道の心得もあり、作陶、海釣りなど多趣味。「料理人はやさしくなくてはいけない」と、後進をやさしく育成している。著書多数。
▼校長 向笠千恵子よりご挨拶
いま、郷土料理はたんに地域の料理にとどまらず、日本全体を結びつける食になっています。たとえば、出身地を懐かしんで郷土料理を食べる方もいますが、知らない土地の知らない郷土料理のおいしさを楽しみたいと、郷土料理店に足を運ぶ方がとても増えています。
2007年に選定された農水省の「農山漁村の郷土料理百選」では、わたしは選定委員の一人として選考にあたりましたが、全国から集まった7万通以上の人気投票で、山形県の芋煮と鹿児島県の鶏飯が圧倒的な票数を集めたのがとても印象的でした。両県出身の方々がそれほど大勢いるはずもありませんから、他の都府県の方々にとっても「おいしい郷土料理」として認められていると考えていいでしょう。ということは、芋煮も鶏飯も、日本人の「ふるさと」全体を代表する料理になっているということです。
その意味では、郷土料理は日本人同士をつなぐ大切な食になっていますし、地方と地方を交流させ、まちとむらを結びつける心のツールでもあるのです。
郷土料理伝承学校・第一期では、6回の講義を通じて、郷土料理の食材、調味料、調理、食器に至るまで、幅広く学習していただきたいと思っております。食材の生産現場からは、下仁田ねぎをテーマにして小金沢講師、米沢牛の食文化を尾崎講師にそれぞれ解説していただきます。掛田講師には郷土料理を支える調味料・酒類をご説明いただきます。また、高家講師は農家レストランの献立と経営について、川原講師は料理と器の演出法についてお話していただきます。
この郷土料理伝承学校を通じて、郷土料理が日本人にますます愛されるようになることを心より願っております。
※向笠千恵子(むかさちえこ)プロフィール
フードジャーナリスト、食文化研究家。東京・日本橋生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。日本の本物の味、安心できる食べもの、伝統食品づくりの現場を知る第一人者。志をもった生産者、おいしさ、民俗、歴史、器などを多面的にとらえながら、現代の食を綴っている。
農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」選定委員などを歴任し、「食アメニティコンテスト」審査会長、本場の本物審査専門委員、まちむら交流機構アドバイザリー委員などを勤める。農と食や生産者と消費者の交流、スローフード運動にも積極的に参加している。消費生活アドバイザー。俳人協会会員。NHKラジオ深夜便にレギュラー出演中。
著書は『日本の朝ごはん』(新潮文庫)、『日本の朝ごはん食材紀行』(新潮文庫)、『美味しいもの、みつけた』(講談社)、『日本人が食べたいほんもの』(新潮文庫)、『日本の食材おいしい旅』(集英社新書)、『日本のかくれ味』(集英社be文庫)、『日本の旅ごはん』(小学館)、『米ぢから八十八話』(家の光協会)、『本物にごちそうさま』(ポプラ社)、『ごはんの旅人』(JTBパブリッシング)、『一食一会』(小学館101新書)、『すき焼き通』『食の街道を行く』(ともに平凡社新書)、『日本ローカルごはん紀行』(講談社+α文庫)など多数。監修書に『郷土料理大図鑑』(PHP研究所)、『ふるさとおもしろ食べもの百科』(日本図書センター)など。
2011年、『食の街道を行く』(平凡社新書)がグルマン世界料理本大賞・紀行本部門グランプリを受賞。
ホームページ: http://mukasa-chieko.com/
▼ 開催経緯(事務局より)
「郷土料理レシピを紹介して欲しい。」
「次号(雑誌)の特集で郷土料理を取り上げたい。力を貸してほしい。」
「郷土料理の料理教室を開催して欲しい。」
2007年の開催時から、200万人を超える閲覧者がいる「郷土料理百選」には、メディア、出版社、教育関係、飲食店関係、そして一般消費者から様々な声が届きました。ひとつひとつの声に応えてきたことで、多くの温かな言葉が運営事務局に寄せられています。
最近は、飲食店関係者や学生、多くの女性から、下記のような声が多く挙がるようになりました。
「生産者の声が聞ける機会を作って欲しい。」
「郷土料理を体系的に学べる機会を作って欲しい。」
「食材や食文化にまつわる蘊蓄を学びたい。」
「日本の食文化を学べる講座を開いて欲しい。」
食の最前線にいる人々。将来の日本食文化を担うことを目指している若者。家庭の食卓を支える女性。日本の食文化を支える方々の声に応えることは、より積極的な郷土料理の普及に繋がると考え、郷土料理百選の選定委員を務めた向笠千恵子氏に相談。期待に応えられる催しについて検討を重ね、この度の「郷土料理伝承学校 -全六回- 」を開催する運びとなりました。
全国の食に精通した向笠千恵子氏をはじめ、各界の匠が講師を務める本講座は、運営事務局に寄せられている声に応えれる講義内容であると考えております。